Novel brainの研究室

物語理論の研究をしています

0.序章 原型とオリジナリティ


◆原型


「創作物を作ろう」と思い立つ瞬間、人は必ず「なにかの刺激」を受けている。

それは分かりやすいところでは他人の手による創作物かもしれない。

面白い小説を読んだ。ぼくもこんな物語が書きたい!

つまらない映画を観た。おれならもっと面白くできた!

素晴らしいイラストを見た。あとイラストのキャラクターを動かしてみたい!

場合によっては、それは実在の人間だったり、体験した出来事かもしれない。

こんな変な人がいた。彼をモデルにした作品が作れないだろうか。

こんな嫌なことがあった。このモヤモヤを小説に昇華したい。

過去の記憶から刺激を受けることもあるだろう。

面白かった創作物を突然思い出した。過去に体験した出来事がフラッシュバックした。十分にあり得る。

あるいはそれは夢かもしれない。

自分の思考そのものも範疇に入る。昔から考えていた命題に対する、革新的で刺激的な回答。芸術的なまったく新しい表現技法…。

色々なパターン。無限の可能性がある。

だが、「創作物を作ろう」と思い立つ瞬間、あなたは必ず「なにかの刺激」を受けている。それだけは間違いない。

ない?

あるはずだ。

創作をするなら、まず、なにがあなたを創作に駆り立てたのかを探し出して欲しい。

この、あなたに創作物を作ろうと思い立たせた「なにか」を、【原型】と定義したい。

原型はひとつであることもあるし、複数に渡ることもある。

とある知識と、とある作品の感動が不意に組み合わさったときに生まれる創作衝動もあるだろう。

そのときの原型は「とある知識」と「とある作品の感動」の両方だ。

だが、注意して欲しい。

原型は探すものであり、創り出したり、こねくり回してはいけない。

それは原型ではない。

あなたに創作衝動をもたらした、その大元にあるものを、あなたの手で探し出して欲しい。

それはあなたにしかできない。


◆原型の感動


原型はあなたに刺激を与えた。だから、あなたは創作物を作ろうと思い立ったはずだ。

その刺激が、どんな刺激の仕方であり、あなたにどんな感情を想起させたのか。

つまり、どのような感動を与えたのか。

『共感』か、『理解』か…。

幸福か。喜びか。楽しさか。笑いか。感傷か。切なさか。悲しさか。苦しさか。怒りか。閃きか…。

その内容を明らかにし、記録して欲しい。

『感動』とはなんであるか…詳しい定義については次回以降に語っていきたい。


◆創作のオリジナリティ


すべての創作物にはオリジナリティがあるべきだ。

だが、創作にオリジナリティは1%あればよい。

1%以上いらないという意味ではない。1%確保することすら難しいから、確実に1%は守りきってほしいという意味だ。

オリジナリティを守ることは難しい。これを守るために99%の技術と理性を駆使し、死力を尽くさなければならない。

もし、奇跡が起きたならば、1%のオリジナリティを死守した作品が2%、3%とオリジナリティの領域を広げられることがあり得るだろう。だが、それは奇跡の話であり、狙ってやる話ではないのだ。

1%のオリジナリティを死守すること。まずはここから始めたい。

原型を探し出し、原型の感動を記録する。

これは1%のオリジナリティを守るために大切なことだ。

その原型に、その感動の仕方をした人間は、この世にたったひとり、あなたしかいない。

近しい感じ方をした人間がいたとして、あなたと『同じ』感動をした人間はいない。絶対にいない。

あなたはその原型を選んだ。あるいは、その原型に選ばれた。

「なにかの刺激」に反応し、創作しようと思い立った。

その事実、その感動こそが、絶対に手放してはいけない、1%のオリジナリティである。

我々は、この感動を再現しなければならない。

あなたが感じた、あなただけが感じたその感動を、あなたの手で再現するのだ。

それは、紛れもなく、あなたにしかできない。

そのためには、99%の技術と理性が必要になる。

――では、技術と理性の話を始めよう。